幼なじみじゃ、なくなった夜。
「ごめん榎波」
「は?」
「私、やっぱり榎波とは付き合えない」
振り向いて、動きを止めた彼。
車のライトもなく、街灯のボンヤリとした灯りに照らされた榎波がどんな顔をしているのか怖くて、靴を見たまま私は話す。
「私にとって榎波はすごく大事な、幼なじみで…いっぱい考えたけど、私やっぱり、幼なじみ以上には思えない。…ごめん」
時間が止まったみたいに静かだった。
「…おう」
どのくらいの時間だったか分からないけど。
耳に届いた榎波の声が、予想以上に普通だったことに驚く。
「分かったよ」
顔をあげると、泣き笑いみたいな、そんな顔をした榎波がいた。