極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「……か?おい、楓。どうした?」
「え?」
名前を呼ばれたことに気付き顔を上げると、目の前で私の顔と料理を交互に見て眉間にシワを寄せている彼がいた。
「すみません。なんでしょうか」
「それがさっき言ってた尾羽毛だが、口に合わなかったか、と聞いたんだ」
「あ…そうだったんですね。すみません。ちょっと考え事してて」
謝り、早速、教えてもらった尾羽毛を口に運ぶ。
「ん?これ、あまり味はないんですね」
でも初めての食感が面白い。
箸が進む。
が、反対に今度は紬の方が食べる手を止めてしまった。
「社長?どうかしましたか?」
「プライベートで社長はやめろ」
あ、そうか。
そういえばさっきさり気なく呼び捨てにされてた。
でもなんて呼べばいいのだろう?
中津川さん、じゃ堅苦しいし、呼び捨ても年上に失礼な気がする。
となると…
「紬さん?」
「なんだ、楓」
満足そうに私の名を呼び捨てにする紬が幼く見えて母性本能をくすぐられる。
もう一度名前を呼ぶと今度は照れたのか目を逸らされた。
その反応が可愛くて思わずクスリと笑ってしまう。
「笑うなって」
「すみません。でもいいですね、名前で呼ぶの。距離が近付いた気がします」
名前で呼び合うのは『好き』と言うよりも親密感があるとなにかで聞いたことがあったけど、まさしくそれ。
特に私は『社長』って呼んでたから一気にプライベートな感じになる。
「楓は本当に余裕だな。余裕過ぎて崩してみたくなる」
紬はウーロン茶をひと口飲み、私に視線を据えた。
その熱っぽい視線に捉えられて鼓動が早まり、顔が熱くなる。
見つめられるだけでこんなにドキドキするんだから余裕なんてない。
それなのに別の問題が意外なところからやって来た。