極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
頭を下げる紬に慌てて否定する。


「社長が謝ることじゃないですから頭を上げてください」


別に誰が悪い訳じゃない。

ただタイミングが悪かっただけ。

芳川さんの同期が不正を働いていなくて、芳川さんが酔ってなくて、私も紬の会社の問題に気付いていなければこんなことにはならなかった。


「お食事は美味しかったですし、色々話せて楽しかったです。ゴルフにも行きましょうね」


また努めて明るく言うと、ちょうど信号が青に変わり、車が発進した。


「この埋め合わせは必ずするよ。ゴルフもいいが、また食事をしよう。今度は誰にも邪魔されない個室を用意するから」


そんなに気遣ってくれなくてもいいのに、配慮してくれる気持ちが嬉しくて小さく頷く。


「次はいつが空いてる?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね」


予定を確認するために手帳を出そうとリュックを開けたとき、紬の会社の資料に触れた。
瞬間、手が止まる。


「どうした?」


急に黙ってしまった私に、紬が心配そうに声をかけてきた。


「いえ。なんでもありません。ただ、少しこれから忙しくなりそうなのでまた後日連絡させてください」
「当分、会えないかもしれないのか」


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