極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「いい部屋ですね。それに綺麗。車同様、綺麗にしてるんですね」
「部屋の掃除はハウスキーパー任せだがな」


素っ気ない言い方に少し戸惑う。

そういえば今日はまだ目を合わせてくれていない。

でも私が室内ばかり見ていただけかもしれないと、キッチンに立ち、コーヒーを入れている紬にハウスキーパーの方について触れる。


「柔軟剤を間違えたっていう人ですよね?」
「あぁ。そういえばそんな話をしたな」


思い出したことに少しだけ口元が緩んだ紬を見てホッとして話を続ける。


「あの柔軟剤はもう使ってないんですか?」
「下手な誤解を与えるようだからやめたんだが、女よけになるなら使うかな」


香水はつけない派だけど、モテる紬にはちょうどいいかもしれない。
コクッと頷くと、紬はカウンターにコーヒーの入ったカップを置きながら、私を見て切なく微笑んだ。


「どうせなら本当の恋人の香りを纏いたかったけど」
「なっ…!もう、そういうこと言わないでくださいよ」


ドキッとさせないで欲しい。

あれ?
でもなんで過去形で話したんだろう。

その些細なことを疑問に思いつつも、今日は大事な話をしなければならないと、重要書類の入ったリュックを下ろす。


< 119 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop