極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「ちょっと待て。休みの日までそのリュック…ということは、もしかして『大事な話』って仕事の話なのか?」


他に何があると言うのだろう。
首をかしげる私に紬は眉間にシワを寄せて言った。


「別れ話じゃないのか?」
「違いますよ」


たしかにこの1週間、私から連絡することはなかったし、メールをもらっても返信は簡潔で素っ気ないものだったような気もする。


「勘違いさせてすみません」
「いや…言われて見れば服装もプライベート感ゼロだもんな」


ジャケットこそ着ていないけど、白のカットソーに黒のタイトなパンツスーツはいつもの仕事スタイルだ。

目を合わせてくれなかったことには気付いていたけど、服装にさえも目を向けてくれていなかったなんて。


「フフ」

切なく微笑んだことや『纏いたかった』と過去形で言ったこと、そんな紬の言動に合点したら、私のことを本当に好いてくれているのだと実感してこんなときでも嬉しく思う。

でも紬は笑った私を見て呆れたように首を左右に振った。


「まったく、焦らすなよ。これで2回目だぞ」
「2回目…って、あぁ。『関係者でなければ…』って言ったときのことですよね?あのときは本当に失礼しました」


小さく頭を下げる。
すると紬はキッチンから出て来て、私の体をふわりと抱き締めた。


「言葉足らずは直してくれ…って、あれ?もしかして、痩せたか?」
「よく分かりましたね」

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