極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~

「手際いいですね」


手伝おうかと思ったけど、手伝う隙もない程テキパキと食材を処理していく。
玉ねぎのみじん切りは細かく、正確で早いし、大根をおろすのも手早い。

「いい匂い」

玉ねぎを炒めている匂いが胃を刺激する。

ひき肉を用意しているところを見ると、ハンバーグだろうか。
大根おろしがあるからおろしハンバーグかな。


「お腹空いたなぁ」


私の心からの呟きに紬は笑った。


「ハハ。急ぐからもう少し待っててくれ。退屈ならそこら辺にある雑誌をソファーの方で読んでも構わないから」


紬が目で示した先にはマガジンラックがあった。
このまま見ていてもお腹空くだけだし、とそこから一冊の雑誌を手に取る。


「あ。これ、社長が載った雑誌ですよね?」
「あぁ。会社の宣伝になればと思って出たんだ。あの頃は利益を伸ばすために仕事は選んでいられなかったから」


それを聞いて読み返すと初めて目を通したときとは違う感情が湧いてくる。

あのときはこの人と話をしてみたいと思った。

仕事をしていくうちに力になりたいと思い始めた。

彼の優しさに触れ、惹かれていった。


でもそれは叶わない。

それならせめて彼の足を引っ張らないようにしないと。
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