極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「それだけ美味しそうに食べてくれると作った甲斐があるよ」
「だってすごく美味しいんですもん。あ、お漬物もいただいていいですか?」


コクっと頷かれたのを見て、キュウリの漬物に箸を伸ばす。


「ん!ぬか漬け。絶妙な塩加減ですね。美味しい。手作りですか?」
「それは母親が作ったものだ。口に合うなら持って帰るといい。たくさんあるから」


これが紬のお母さんの味。
それを聞いてふと思いついた。


「専業主婦になって漬物の漬け方、教えてもらおうかな」


料理は元々嫌いじゃない。
洗濯も掃除も嫌いじゃない。

考え抜いた答えではないだけど、結婚して家庭を守るのはいいかもしれない。
それなら紬の力になれるから。

でもこの呟きを耳にしていた紬は、片付けも早々に、ソファーへと私を誘い、私の言葉を否定した。


「楓のような実力とやる気のある人間が家庭に入るのはもったいない」


食後に、と言って紬が入れてくれたお茶の入った湯呑みを持つ手を止め、彼を見上げ、訊ねる。


「社長は反対ですか?女が家庭に入ること」
「反対ではない。それはどちらでも構わないと思う。本人の意思を尊重したいから。ただ楓の言葉は本心じゃないだろう」


見透かされている。
でも誤魔化した訳ではない。

< 124 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop