極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
そしてリュックの中から取り出した書類を紬に手渡す。


「これはなんだ」


書類を受け取った紬の斜め下に正座して書類の中身を説明する。


「今日はこの話をしに伺いました」


チラッと視線を寄越した紬に、簡潔に言葉を発する。


「御社には水増し経費が存在します」


この発言に紬はあからさまに眉根にしわを寄せた。

室内に静寂が広がる。
その重苦しい空気を切り裂くように、慎重に話を続ける。


「先月の帳簿を見て気付いたのですが、売上に比べて利益が低かったんです。それが気になり、色々と調べさせていただきました」


中でも特に気になったのが高額な交際費だった。

紬から資料を見せてもらい、借りたのはその交際費の内容が正しいかを調べるため。

本当にその店が実在するか、料金表が合っているか、どんな業態のお店なのか確認させてもらったのだ。

結果、その感は当たった。

税務調査の入りにくい個人経営のお店を使い、架空の請求書をもらっていたり、請求書の桁をひと桁増やしたりしていた。

「これは刑事事件になる得る事象です。前例があるのでご存知かと思いますが」
「知っていたのか」


驚く紬に小さく頷いて見せる。
そしていちばん大事な話を切り出す。
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