極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「…以上です。ご静聴、ありがとうございました」
最後のページを閉じたときには達成感に満ち溢れていた。
自分に出来る全てのことをやりきった。
頭を下げて席に着けば心地いい疲労感に包まれた。
「まだまだだな」
所長はそう言ったけど、表情は清々しい程明るい。
質疑もないし、ホッと胸を撫でおろす。
でもまだ会議は終わっていない。
次に紬が私と所長について触れ始めたことで場内は騒がしくなった。
「一部の方にはお伝えしてありますが、当社は今後、上場に向けて動き出します。それに伴い、彼女を当社所属の税理士として、そして彼女の上司である藤澤先生を公認会計士として起用したいと考えています」
図らずともこの場にいる所長に焦点が当たり、所長も驚きを隠せない。
「ここで発表するとは、やられたな」
と苦笑いを浮かべた。
でも起用に関して、ひとりの年配の男性の手が挙がったのが見えたので、ふたりでそちらに顔を向ける。
「彼女にはあまり良くない噂が流れてます。そのことを社長はご存知ですか?」
「それは若いとか、未熟とか、無能とか、見た目だけとか、社長を誑かしているとかですか?」
当事者を目の前にしてグサグサと心に刺さる悪口を淡々とした口調で言われるとそこに気持ちはないと分かっていても傷付く。
俯く私の隣で所長は笑った。
「ひどい言われようだな」