極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
婚姻届
会議室から先に退出した私と所長は、契約に関する話をするために、いつもの応接室で紬が戻るのを待つことにした。
「いやー、しかし、前に来たときも思ったがここの窓はすごい大きいよな」
所長は荷物を机の上に置くと大きな窓から外界を見下ろした。
「おぉ。怖い怖い。夕焼けは綺麗だが高所恐怖症でなくてもこれは怖いわ」
「ですよね」
今だに窓に近付けない私は椅子に手を付きながら所長に同調する。
「それなのにこれからきみはここで仕事をするんだよな」
ポツリと呟いた所長の背中は夕陽の影で哀愁が漂って見える。
それを目にして一抹の寂しさが押し寄せてきた。
唇を噛み締め、気持ちを押し殺し、所長にお礼を伝える。
「所長。ありがとうございました。おかげで無事に報告を終えることが出来ました」
「ん?あぁ。何度か危うい部分があったがな。きみの成長を目の当たりに出来て良かったよ」
小さく何度か頷いた所長はゆっくり振り返り、微笑んで言った。
「よく頑張った。きみは俺の自慢の部下だ」
「そういうことは…言わないでください。泣きそうなんですから」
顔を逸らし、口元を手の甲で覆う。
頭の中には入社してから所長の背中を追っていた日々が走馬灯のように駆け巡っていた。