極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
紬の言葉を受けた所長は、困ったように笑い、紬の斜め前に座ってから、腕を組んで言った。


「たしかに関係者との恋愛禁止の裏の意味、そのものだが、うちは優秀な人材を失うことになるんだよなー」
「でももう後任を見つけていらっしゃるとか」


そうなの?
所長の方を見るとそっぽ向かれてしまったので、紬に聞く。


「どうして社長がご存知なんですか?」
「仲介人である銀行の人から聞いた」


なるほど。
私は探していることに全く気付かなかったけど、後任を事前に探していたということは、つまり私が役員の方に認められると前々から思っていてくれたと思っていいんだよね?


「……って、所長?!所長は一体、なにをしてるんですか?」


素知らぬ顔で婚姻届の横に置いている用紙は監査契約書だ。


「いつの間に用意しておいたんですか?」


感激していた気持ちが一転、驚きに変わる。


「公認会計士としての依頼を受けたのは会議中でしたよね?」
「まぁ、そうだが、こうなることを予想してたから後任も、これも用意しておいたんだ」


そういえば所長は私との別れに感傷に浸っていたのもつかの間、契約のことを心配してた。

現に、婚姻届の記入に引き続くように契約書にサインを求め、契約を進めている。

抜かりない、所長の姿勢に呆れて物が言えなくなる。
隙のない内容の契約書は流石としか言えないし。
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