極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「ありがとうございます。これで落ち着いて仕事が出来そうです」
はじめから引いておいてくれれば時間の無駄にならなかったのに…という言葉は飲み込み、立ち上がり席に着く。
「では早速、先月の帳簿を確認させていただきます」
背負っていたリュックからノートパソコンを取り出し、机の上に用意されているmicroSDを差し込む。
そしてその中に入っている会計データと一緒に置かれている伝票の勘定科目が合っているか、銀行の通帳と残高が合っているかをザッと確認していく。
そう。
これが私、勝俣楓の仕事。
税理士として生徒会長風の彼、中津川紬が経営するナカツガワ社の税務をサポートすることが仕事なのだ。
ただし、私がこの会社を担当するようになってからは日が浅い。
『ナカツガワの税務をお願い出来ませんか?』
私が勤める藤澤税理士事務所の藤澤所長あてに懇意にしている銀行から連絡があったのはほんの3ヶ月前の話だ。
『創立者であるお祖父様の代から担当していた税理士を紬が就任2年目にして解雇してしまい後任を探している』
と言って相談してきた。
なぜ解雇したのか。
その答えは本人に聞いても教えてくれなかった。