極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
なんてことだ。
全然気付かなかった。


「教えてくれれば良かったのに」


コーヒーカップを机に置き、所長の斜め前に腰掛けながらふくれっ面で言う。


「私だって無粋な真似をしたいわけじゃないんですから」
「それはそうだろうが、桧山くんにその気がなさそうだったから」


チラッと様子を伺うように所長は桧山さんを見た。
その視線を受けて桧山さんは不思議そうに首を傾げた。


「その気なんて起こしたら規則違反じゃないですか。所長が考えた規則ですよ?忘れたんですか?」


私と同じようなことを言った桧山さんに、所長より先に言う。


「『裏の意味』があるそうですよ」
「『裏の意味』?なにそれ」


その意味までは知らないと首を左右に振り、答えを聞くように所長の方を向く。

でも桧山さんが知らないと言ったことの方に所長は飛び付いてしまった。


「もしかしてモテるのに桧山くんが身を固めないのはこの規則のせいか?」
「そういう訳でもありませんが…」


チラッとこちらを見られて今度は私が首を傾げる。

だってなんでこっちを見たのか皆目検討もつかないから。
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