極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「中津川様。お待ちしておりましたっ!」
自動ドアが開いた途端、ガタイと威勢のいい若い男性の声が響いた。
「あちらの方がご連絡いただいていた女性ですね?」
アニメの声優さんのような可愛らしい声で紬に私のことを確認しているのは、男性の背後から現れた明るい茶髪のお団子頭が目を引く可愛い女性。
「よろしく頼むよ」
紬が女性店員にそう答えた瞬間、満面の笑みを浮かべ、こちらに駆け寄って来た。
「さ、さ。中へどうぞ」
「え?あ、ちょっと!」
背中を押されて中へと押し込まれることに抵抗する。
でも可愛らしさに反した力強い動きに負けてどんどん中に押し込まれていき、あっという間に試着室へと誘導されてしまった。
「こちらにお着替えください」
にこやかな笑顔で手渡してくれたのは、白Tシャツ、薄手のグレーパーカー、赤紫色のショートパンツに黒のサポートタイツ、そして登山靴。
「失礼しまーす。着替え終わりましたかー?って、すごくお似合いじゃないですかー!」
私の返事を待たずに試着室のカーテンを開けたことと、異常に高いテンションで褒めることに苦笑いで応える。
だって登山なんて小学校の遠足以来だ。
こんな本格的な格好初めてだし、とてもじゃないけど似合っているとは思えない。
「さすが中津川先輩がお連れする女性は違いますね。モデルさんみたい」
褒め過ぎられると余計似合っていないような気になる。
でもそれより彼女が言った言葉に引っかかった。
「先輩?」