極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「俺は人を見る目がなかったようだ」
「え?」
消え入るような小声で聞き返すと、紬はゆっくりとこちらを見上げた。
そして初めてまともに視線を合わせてくれた。
「…っ!」
眼鏡の奥にある鋭い瞳に捕らえられて呼吸が止まる。
胸も心拍数が一気に上がったようで苦しい。
それでも視線を外さず、そのまま見つめ返せば、紬の方が先に目を逸らした。
そして眼鏡の位置を直してから唐突に3ヶ月前の話しを始めた。
「3ヶ月前、新しい税理士がきみだと紹介されたとき、うちの会社が新人教習の場にさせられてると思い、かなり頭にきていた」
新人教習?
その考えは私の中になかったけど、言われてみればそう捉えられても不思議ではない。
本来、紬の会社ほどの事業規模と従業員数ではもっと大手の、しかも経験のある税理士が関わるのが妥当だから。
実務経験が5年しかない私を見て、不安に思うのは当然だ。
今からでも遅くない。
「……担当を代えてもらえるよう所長にお願いしてみます」
力になりたかったけど、はっきり言われてしまえば仕方ない。
顧客といい関係が築けなければいい仕事も出来ないのだから。