極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「時間はまだ平気か?」
「時間、ですか?」
カーナビに表示されている時刻は午後6時。
電車は余裕であるし、特に帰宅しても誰が待っているわけでもない。
「大丈夫ですが」
「それならもう1箇所だけ付き合ってくれ。すぐに済むから」
そう言うと会社の駐車場に車を止め、車外に出た。
それに続いて降りる。
「どこに行くんですか?」
「社に行く」
なぜこのタイミングで?
でも気まずさが残る状態では聞くに聞けず、ただただ紬の後ろをついて行く。
すると「悪かったな」と、エレベーターの到着を待つ間に謝られた。
「どうして社長が謝るんですか?」
紬の斜め後ろにいるため、彼の表情が分からない。
なぜ謝られたのかも。
だから様子を伺うように近付いてみる。
でも話し出した紬の声が彼には不釣り合いなほど投げやりな感じだったので、出た足が止まってしまった。
「休みの日に高所恐怖症を克服しなきゃいけないなんて嫌だっただろ。しかも山登りなんて。断ってくれても良かったのに、さすがにクライアント先の社長に言われたら、断れないよな。そんなことも気付いてやれなくて悪かったよ。あと嫌な思いさせてすまなかった。でも俺が関与するのはこれまでだから、あともう少しだけ付き合ってくれ」