極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
そういえばあのとき、紬は周りにいた方々に私のことを『優秀な税理士』と言っていた。

それなのにも関わらず、半年も経たずに契約を切られたとなると他のお客様からも確実に疑わしい目で見られるだろう。

これにはさすがにぐうの音も出ない。
そんな私に所長はひとつの打開策を提案して来た。


「ナカツガワの経営状況は右肩上がりだ。このまま登り続けた場合、うちが税務を担うには限界がある。この意味は分かるか?」
「はい」


所長は紬の会社を上場させようとしているようだ。

紬の会社は利益額や事業継続数など、多くの面から見ても十分、上場を目指せる。

デメリットはもちろんあるけど、上場すれば資金調達が容易にできるようになるし、会社の知名度アップにも繋がる。

これは税務を担当する前から、経営誌でも取り上げられていたこと。

ただその話を私から話すにはまだ早いと思っていた。


でも所長はいいタイミングだと言う。


「この話が通れば今回、きみが相手社長と険悪になったことは無かったことに出来る」


だから所長は『担当の変更』と言ったのか。
上場を目指して準備を始める場合、税理士ではなく公認会計士が担当するのが常だから。
でも…
< 78 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop