極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「お忙しいところ申し訳ありませんが…」
実松さんに連絡してみたところ、その日の夜、アポイントが取れた。
気が急いているせいで約束の時間より20分も前に到着。
会議中だと言う紬をいつもの応接室で所長と待つ。
でも落ち着かない。
浅くなる呼吸を整えるようにして深呼吸を繰り返すも、あまりに何度もしているせいで過呼吸になりそうだ。
「トイレに行ってくる」
所長も緊張しているのだろうか。
忙しなく部屋を出て行った所長の背中を見て、余計な気を使わせてしまっていることを申し訳なく思う。
そこへ入れ違いで実松さんがコーヒーを運んで来てくれた。
「すみません。急な来訪なのに」
時刻は19時。
とっくに定時は迎えているはずだから、そろそろ帰る支度を始めていただろうに。
「気にしないでください。社長の会議が終わるまでは片付けが残ってるのでどっちみち帰れないですから。それより珍しいですよね。おふたりでいらっしゃるなんて。なにかトラブルですか?」
「え?いや、まぁ…」
トラブルはトラブルだけど、実松さんが気にするような内容ではない。
ただ『社長との関係性に問題が発生したんです』なんて言えるわけもなく、コーヒーカップに口をつけることで誤魔化す。
そうすると実松さんは察してくれた。