極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「言えないことなんですね。すみません。余計な詮索して。でも今日は珍しく社長が朝からイライラしてたので、それと関係あるのかな、と思ったんです」
身に覚えがあり過ぎてカップを持つ手が止まってしまった。
そこに実松さんが目ざとく反応する。
「やっぱりなにかトラブルが起きてるんですか?」
疑いの目を向けてくる実松さんからどう逃げようかと逡巡しているところにトイレから戻った所長と会議を終えた紬が順次やって来た。
おかげでそれ以上追求されることはなかったけど、本当の問題はここからだ。
私を避けるように斜め前に座った紬に、上場の話をしなければならない。
本当なら謝罪したいところだけど、そこはグッと堪え、所長に任せる。
「急にお呼びたてして申し訳ない。お時間は大丈夫でしょうか?」
「30分後には出ないといけないので、手短にお願いします」
紬が手元の時計を見たのと同じように所長も腕時計を見てから、静かな口調で上場の話しを切り出した。
「…そうなりますと、税務関連は監査法人、もしくは公認会計士の下で準備を始める方が得策かと思われます。ただ見つけるのも大変でしょうから公認会計士の資格も持っているわたくしにお任せくださるなら全面的にサポートさせていただきます」