極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「コホン」と咳払いをしてパソコンの画面を見ながら話しかける。


「社長。すみませんが過去の資料を見せていただけないでしょうか」
「なぜ?」
「前から過去と比較したいな、と思っていたんです」


本音は今、気になっていることの原因を探りたいからだけど、そこはあえて言わない。

ただ、急に硬い言い方をしたことに対して紬は違和感を感じたようだ。

目の前の席に戻り、じっとこちらの様子を伺ってくる。
その眼鏡の奥にある漆黒の吸い込まれそうなくらい綺麗な瞳で見られると内心を読まれそうで逸らしたくなる。

それでもなんとか耐えてみれば、紬は内線で実松さんに連絡してくれた。


「過去の会計資料を3年分持って来てくれ」


良かった。
見てもいいらしい。
ただ…


「うっ…」


多い。
台車で運んで来てくれた実松さんには申し訳ないけど、紬が3年と言ったところを訂正して2年にすれば良かった。

こんなに多いなんて。
気になる部分だけ目を通すにしてもかなりの時間がかかってしまう。


「時間は大丈夫か?」
「私は大丈夫ですが、社長は…」


腕時計を目にした紬に、先に言葉を重ねる。


「社長の時間の許す限りで構いません」


その間に目当てのものが見つかるかは分からないけど、持ち帰れるものではない。
今の時点でおかしいと思ったところを集中的に見ればとりあえずは済む。


「いや、俺も予定があるわけではないから、急ぐ必要はない。気の済むまで見てくれて構わない。ただ俺は邪魔だろうから席を外すよ」


それはありがたい。
こればかりは目の前で見られていたらやり難いと思っていたのだ。


「では終わりましたらご連絡します」


紬の申し出をありがたく受け、集中すること2時間。
目当てのものを見つけた…。

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