極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「終わりました」
内線で連絡すると、しばらくして紬が部屋に戻って来た。
なんとなく目を合わせづらくて、弾いておいた資料の山に目を向ける。
「こちらの資料、お借りして行きたいのですが、よろしいでしょうか」
「それ全部か?持って行くのは構わないがさすがに重いだろ?」
そのためのリュックだ。
両肩に負担が分散されるリュックは必須アイテム。
雑誌に載っているようなOLさんが持つオシャレな鞄を持ちたいけど、背に腹はかえられない。
「よいしょ」
声を出してリュックを背負い、挨拶を交わす。
「では社長、資料お借りします。それと次回ですが、実松さんを通してご連絡します」
「予定については分かった。が、ちょっと待ってろ」
そう言うと紬は足早に部屋を出て行ってしまった。
「なんだろう。早く帰りたいのに」
5分待っても戻って来る気配がない。
仕方なくリュックを下ろし、椅子に座るとそれから5分後にようやく戻って来た。
「よし。帰ろう」
「はい?」
突然、なにを言い出すのかと思えば『帰ろう』?
しかも私のリュックを手に取ってるし。
「うわ、本当に重いな」
「返してください」
立ち上がって手を伸ばす。
でも簡単に避けられてしまい、私を置いてどんどん先を歩いて行ってしまう。
遅くまで残っている社員の方々の好奇の目に晒されてもお構いなしだ。
「社長!本当に大丈夫ですから、返してください。皆さんに見られてます!」
小声で訴えるも紬は社員の方を一瞥しただけで、先を急ぎ、エレベーターのボタンを押した。
「社長。一緒に帰社するのは得策ではないかと。ですので、リュック返してください」
「荷物なら食事のあと返す。それにきみはもう俺の結婚相手だろ?変な噂を立てられても問題はない」
そう言うと階数表示を見上げていた視線を下ろし、私を見た。
「もう予約してあるから。拒否権はないよ」