極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「懐石料理なんですね」
どれも手の込んでそうなお料理ばかりだ。
前菜、吸物、造里、焼物など一品一品、丁寧に食材やら仕立ての方法が書かれている。
見るだけで味が想像出来るものもあれば皆目検討つかない料理もあって…
「ん?これなんて読むんですかね?オウモウ?」
読めない漢字を紬に見せる。
「あぁ。それはオバケだ。尾羽毛って読むんだ。鯨の一部のことだよ」
「へぇ。初めて知りました。頭いいんですね」
首を傾げられて言葉を付け足す。
「難しい漢字読めるのってすごいじゃないですか。私、漢字が苦手だから余計に凄いと思います」
それと、こういう食事にも慣れているようだ。
前菜として運ばれてきた漆塗りの器にひと口サイズの色とりどりの料理が5種類乗せられた料理を見ても表情ひとつ変えない。
私はあまりの綺麗さに感激して思わずスマートフォンで写真を撮ってしまったくらいなのに。
テンションの違いに生活観の差を感じる。
でも味覚は似ているらしく、「美味しい」と言うタイミングが同じだった。
驚き視線を上げれば目が合い、柔らかく微笑まれた。
「結婚相手と味覚が似ていて良かった」
その言葉と笑顔に胸が締め付けられる。
「心臓に悪い」
思わず胸元を手で押さえる私に紬が短く疑問を投げかけて来た。