リト・ノート

「一応できるつもりでやってんだけど」

「つもりやふりではダメなんだ。やればできる男でも、やってるふりじゃ無駄だろう」

美雨の言葉を使って、今日のリトは一際攻撃的な口調だった。キツく当たることでやる気を出させようとしているのだろうか。

素直に「もう少しだ」って言ってあげたらいいのにと思いつつ、美雨はリトを見つめる。



無言になった羽鳥に対しては、美雨は何も言えなかった。

できるだろうと期待されてうまくいかない辛さは美雨にはたぶんわかる気がした。でもこうやって今の羽鳥を追い込んでいるのは自分だ。共感も励ましも、何を言っても嘘くさいだけだろう。



美雨自身は何もしなくも聞こえる。聞きたくなくても。努力なんか最初からしなくても。

不公平だと思った。初めから羽鳥がこの力を持っていれば良かったんだ。美雨は一度も欲しがっていない力なのに。

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