リト・ノート
一瞬のうちに、そのシーンは鮮やかに蘇った。知らない古い街の知らない記憶。なぜか涙がこぼれだしていた。

「これが私の記憶だっていうの?」

「さあ? 君の想像かもしれないけれど」

「リトが見せたんでしょう? 何がしたいの?」

「君はどうしたいんだい?」

「そんなことわからないよ。何をしたらいいか教えてよ、わかってるんでしょう」

知らない記憶に残る恐怖心と、はぐらかすリトへの怒りで、美雨の声はだんだん大きくなっていた。

「君の心がわかってるんだ。わからないふりをしている。そういうゲームだ」

「やめてよ! 変なことばっかり言って意味がわからない。私がしたいようになんて思ってないくせに! こんなの見たくない。わかりたくもない。
もう私に話しかけないで!」

叫ぶように言うと、リトがチチチと鳴いた。話す言葉にそぐわないかわいい声だった。


「美雨?」

ドアが開く気配に、ベッドの上で両膝を抱いて顔を隠した。泣き顔を見られたくなかった。

ベッドがきしんで、近くに羽鳥が座ったのが分かった。美雨は何も言えずに嗚咽を堪えて泣き、羽鳥も何も言わずそこにいる気配がするだけだった。

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