リト・ノート
3人とも黙ったところに、ピンポンピンポンピンポンとけたたましくチャイムの音が響いた。

「鍵持ってけよ、バカ」と羽鳥が部屋を出て行く。


本人がいなくなった隙に言うのは卑怯だが、でも言える時に美雨は言うことにした。

「沙織、許してもらえると思ってないけどごめんね。羽鳥を好きになったってちゃんと言わなくてごめんなさい。沙織が好きなの知ってたのに好きになっちゃってごめんなさい」

そこに「え、何2人とも来てんの? 修羅場?」と羽鳥兄の大声が聞こえた。

「でももう会わないから。先に帰るね」と美雨は急いで部屋から出た。

「こないだは運ばせてしまってすみませんでした」

一方的に頭を下げて、羽鳥のほうは見ないで玄関から逃げ出すように帰った。




気づけばもう学年末試験期間だった。誰とも一緒に勉強せず、ただ黙々と取り組んだ。

リトを置いてきたままなのは気になっていた。羽鳥だっていい加減迷惑しているはずだ。よくよく考えたら、羽鳥とリトだってそんなに友好的な状態で会話を終えていないはずだった。美雨は自分のことばかりで全く頭が回っていなかった。

でも、この期に及んで羽鳥に連絡して会うのはどうにも気が引けた。春休みになっても決心がつかず、美雨は何度もスマホを見てはためらっている。







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