リト・ノート
沈黙により1人で緊張感が高まる美雨に、まったく気負わない声で羽鳥が言った。

「動物に好かれやすいだけか」

「……インコがいるけど、全然懐かないし」

「へえ」

どうでもよさそうな答えだが、話の糸口が見つかった気がして急いで続けた。

「でもしゃべったの。教えてもないのに」

「ふーん、なんて?」

「……美雨は100点取って当然だよねって」

羽鳥は顔を少しこちらに向けたあと、間を空けてからボソッとつぶやく。

「親が言ってんじゃないの」



それは美雨も考えたことで、でも母親が面と向かっては言いそうにない言葉だった。思ってはいそうだが。

「でも私の部屋にいるから、ママが話しかけてるはずないのに」

「中園がいないところでインコに覚えこませてたら、怖いな」

怖い。確かにそう思った。でもそれは、ママが教え込んでいたらという怖さなんだろうか。美雨にはよくわからなかった。
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