リト・ノート
ふっと周囲の音が消えて気配が変わった。

(羽鳥、聞こえるかい?)

「リト?どこにいるの?」

(美雨、話をするのは久しぶりだね)

「この公園にいるのか?」

(そうだね。でも残念だがこの身体で君たちに会うことは、もうできない)

頭の中に響く声だったが、何かいつもと違った。少し音が小さいようなあいまいなような気がする。

(さすがに察しがいいね、美雨。羽鳥、君はようやく信じることができた。もう君とも直接つながれるだろう)

「見えてないんだろうけど、手つないでるだけだよ」

(それは単に君が美雨の手を握りたいからだ)

「ふざっけんな」

(ふざけてはいない。今は美雨が君を通して僕の声を聞いているよ)

そう言われて美雨がそっと手を離してみる。何も聞こえなかったが、羽鳥には何か聞こえて驚いている様子がわかってもう一度手を取る。

(だが、手を握ることもインコを経由することも、単なる儀式だ)

「リトは必要ないってこと?」

(どうかな。決めるのは君たちだ)

リトのいつもの口調に、羽鳥がため息をつく。

「で、どこにいるんだよ」

(やっと信じたかい、頭でっかちくん。君は呑み込みが悪すぎる。とっくにできているはずだったんだ)

「できないってお前も言っただろ。そんなことはいいから、怪我してるなら病院連れてくからどこにいるのかさっさと教えろ 」
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