リト・ノート
「ごめんね、リト。ごめんなさい」

何に謝っているのかよくわからなかったけれど美雨は謝りたかった。

(君はそんな風に謝らなくていい。君の気分のいいことを選ぶんだよ、美雨。それだけでいいと、君が僕に教えてくれたんだ)

ふいに気配が薄くなった気がした。

「行かないで」

(ありがとう、でもそろそろ時間かな。僕も羽鳥ももう限界だ。美雨、僕たちはずっと君を見ているから)

手をつないだまま、羽鳥がフラッと倒れそうになる。慌てて近くのベンチに何とか引っ張っていき、崩れるように座り込むのを助けた時には羽鳥はもう意識を失っていた。

前に倒れる羽鳥の頭を美雨の肩にもたれさせるようになんとか動かす。

そのまま並んでベンチに座っていた。この正体のない眠り方から見ても、間違いなく羽鳥のほうがつながっていたんだとわかる。

最後の最後に、できるようになったんだ。

リトはもう会えないと言った。カラスにでもつかまったのか、もしくは遠くへ飛んでいくつもりなのか。『僕たちの絆は切れない』ということは、生きているということだと思いたい。

寄りかかられた頭に自分の頭を預けると、美雨にもふわっと眠気が移るのを感じた。


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