リト・ノート
だから別のことを言った。

「羽鳥、できたね」

「遅かったけどな」

そう言いながらも、羽鳥も少し笑ったように見えた。

「リトに聞きたいこととか叶えて欲しいことがあった?」

「まあいろいろ。あと、自由になりたいって言いたかった。でも単に俺が自由にやればいいんだなって気もする。なんでも叶えてやるって言う割にやるのは俺なんだからさ」

それはそうだろうな、と美雨も思う。羽鳥が自信とやる気を出せばもっとできる。さっきみたいに。


「もう探しても無駄だよな。話せたんだし生きてるって信じようぜ、とりあえず」

もう真っ暗になっていた。母にさすがに心配されるだろう。

羽鳥は兄に電話をして、それっぽい黄色い羽根が落ちててカラスにやられたかもと伝えている。美雨が泣いてるから送ってくと言って切った羽鳥をいぶかしく見ると、これ以上探さなくていいってこと、と言う。

さすがに頭が回る、と美雨は思った。



羽鳥は当たり前のように美雨を送って行くと言ってくれる。何度来てもこの辺りの道を覚えないことに呆れているだろう。

羽鳥はそれ以上何も言わず、2人黙って暗い道を歩いた。

こんな意味の分からない出来事に付き合えるのは羽鳥ぐらいだろうと思って、いてくれたことに心から感謝した。

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