リト・ノート
親友だと思ってる。そう言ってくれたことに勇気付けられ、委員会終了後に思い切って声をかけた。

「は、話したいことがあるんだけど」

「遅い」

沙織は間髪を入れず無表情で答える。

「ごめんなさい」

「あれから考えたけど、正直言ってやっぱり意味わかんない。からかわれてるならいいのにって思った。2人とも頭どうかしてんじゃないのって」

沙織の感想は無理もなかった。美雨にも今も意味がわからない。

「健吾の好きそうな話だし、作り話だといいと思ったんだけど。信じないだろうから言えなくって美雨が悩んでたのは嘘じゃない気がして、そこはもうどうでもいいやって思ってる。リトちゃんもいなくなっちゃったって健吾に聞いたし」

どうでもいいという結論に驚いたが、沙織らしいと美雨は微笑んだ。勉強でもよくわからない部分に見切りをつけてしまう子だ。

羽鳥と沙織はとっくに仲直りしているのかなとチクリと胸が痛み、その勝手な気持ちに自己嫌悪した。



「美雨、1つだけ聞いていい? なんで健吾と付き合わないの? 私のせい?」

「ううん、リトがもういないから会う必要がないだけ」

「普通に付き合えばいいじゃん。好きなんでしょ?」

どう説明したら伝わるだろうと思った。羽鳥とリトを切り離して考えることはできない。何もかも終わったことだったし、今はまだ迂闊に触れるのが怖いことだった。

「健吾は多分わかってないよ。美雨に嫌われてると思ってる」

「そんなことないよ」

沙織の言葉に美雨は思わず笑ってしまった。嫌う理由が全然ない。

「私の気持ちに気づかなかったって謝られちゃったもん。沙織が話したのかと思った」

「勝手に言わないよ、そんなの。自分で言ってよ」

拗ねるような沙織を久しぶりに見た。やっぱりかわいい。

これ以上何か言うつもりはないけれど、美雨のことをちょっとでも好きな気持ちがあったかどうか知りたかったなと思って、きっと「ちょっとくらいは」と微妙なことを言われて傷つくんだろうなと想像した。

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