リト・ノート
「いいなぁ。自分に合ったところって、私はよくわからない」

「大山って陸上部それなりに強いんだけど、屋上に望遠鏡がついてて天文部があるんだよ」

羽鳥が宇宙の話が好きなのはよく知ってる。掛け持ちしたいんだろうか、陸上はまた忙しそうなのに。

ふいに、自分もそこにいる姿が浮かんだ。広い屋上から手をつないで同じ夜空を見上げるシーン。あまりにリアルで、凍えるような冬の寒さに震える気すらした。鮮烈な光景に自分の内側に引き込まれそうになる。

「美雨にも結構合ってると思う」

羽鳥の言葉に現実に引き戻される。美雨、とまだ呼ばれていることにまた少し驚く。

合ってる? 大山高校が?

頭が追いつかず何も答えられないでいると、少し慌てたように羽鳥が言い直した。

「でも合ってるかどうかなんて行ってみないとわかんないしな。人が言うことより自分のやりたいことだよな」

「リトみたい」

「あんなに偉そうか?」

眉をひそめ心外そうに聞かれて美雨は笑ってしまった。どっちもどっちだが、確かにリトには敵わないかもしれない。
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