リト・ノート
2.キョウツウテンガアルネ
ベッドに学習机、電子ピアノとローテーブルを置いてもまだ少し余裕のある美雨の部屋で、羽鳥は興味深そうにリトを観察していた。
声を掛けたり眺めたりしていてもやっぱり話し出さないので、美雨は身の置き場がない。一方テーブル上の鳥カゴを見つめる羽鳥は、片膝を立ててリラックスしている様子だ。
「普通のインコっぽいけどな。セキセイインコ?」
「うん、普通よりちょっと怖がりなだけかなって」
ほんの少し言葉を交わしたまま、羽鳥はまたじっと鮮やかに黄色いインコを見つめている。
どうしよう、飲み物とか用意したほうがいいかな、それとも話さなければもう帰るのかな、と美雨は心の中だけで慌てていた。
「ノミモノハアルトイイネ」
美雨の心を読んだような声に、思わず両手で口を覆う。私なにも言っていないのに!
「なに?」
「聞こえなかった? 今しゃべったでしょ?」
「鳴いてたけど、しゃべった?」
「飲み物はあるといいねって」
「なんだそれ。そんなんじゃなかった」
羽鳥に聞こえていたのは、インコのチチチチという鳴き声だったらしい。美雨は、この声が思った以上に怖いものだと気づいて身体を固くした。
自分にしか聞こえない、つまり幻聴なのか。