リト・ノート
「そうだね。筒抜けだよ、君が思ってることもね」
その言葉にパニックになりかけた美雨の耳に、つまらなそうな羽鳥の声が届く。
「なんだよ。こいつとしゃべってんの?中園は声出さないと俺がわかんないだろ」
羽鳥が嘘をついてないかじっと見る。見たってわかるわけでもないが。
「なんだよ、なんでにらんでんだよ。しゃべれよ」
「ほんとに、私の声は聞こえないの?」
「黙ってても? 聞こえねえよ、そしたらテレパシーじゃん」
鳥がしゃべる現象とテレパシーとそんなに違うものかは疑問だが、羽鳥は嘘をついているようには見えない。
「よかった。気持ち悪い、私の考えが筒抜けとか」
「自分から手握っといて、気持ち悪いとか言ってんなよ」
「あ、ごめんなさい」
そう言われればそうだと、美雨は手を離す。
でも話がきこえなくなるからと、羽鳥が手を重ねてきた。きつい言葉とはうらはらに、インコをそっと包み込む時みたいにふんわりと、でもしっかりと。
「感じの悪い子どもだな。なんでこんなの連れて来たんだい、美雨」
可愛らしくもあるインコの声のまま、リトも十分に感じ悪く質問してきた。
「なんでって……羽鳥なら信じるかと思って」
「俺なら?」
「サオリを連れて来たんだ。でも美雨が怖がっていて、僕の声は届かなかった」
そういうことなの?リトの説明に美雨自身も驚く。今は怖がっていないってこと?十分に怖いけれど。