リト・ノート
ぼんやりと頭を起こしながら、勉強してて寝ちゃったんだっけ、と美雨は状況を思い出そうとした。
制服のまま突っ伏して寝ていたのはローテーブルで、肩にブランケットがかかっている。鳥かごはなく、代わりに数学のノートが広げてあった。
あれ? 羽鳥は? 夢だった?と思い始めた瞬間にドアが開いた。
「起きたの? 羽鳥くん帰るって」
「今何時?」
「6時よ。試験も終わってから教わったんだって? ほんとに美雨はまじめっていうか、要領が悪いっていうか、ねぇ」
誰に話しかけているのかわからないため息をついて、とりあえず玄関まで見送りに来なさいとママに促された。
なぜか弟にまとわりつかれていた羽鳥は、礼儀正しい少年としてふるまっていた。
「羽鳥くんごめんなさいね、こんな時間まで引き留めて」
「いえ、勝手にお邪魔しててすみませんでした」
「美雨はちょっと要領が悪いから、これからもよろしくね」
そつない挨拶を交わして帰っていく。無言で羽鳥に促された気がして、美雨は玄関の外までついていった。
「テストでできなかったところがあるって言うから教えにきたけど、昨日寝てないのか途中で寝ちゃったって言っといたから」
「あ、うん。わかった」
眠った美雨を放って帰るわけにも行かず、怪しまれないようにノートなどを広げておいてくれたようだ。さすがに頭がいい。