リト・ノート
だが翌日の休み時間、廊下でうっかり目が合ってしまった羽鳥に話しかけられた。

「なに無視してんの」

「ごめん。なんて書こうかと思って決められなくて」

「中園って、しゃべるのだけじゃなくて書くのも苦手?」

意外と怒ってはいないようだ、と美雨は少し力を抜いた。

「そうじゃないけど、見られるとかあるかもしれないし」

「俺が信用できないってこと?」

今度は呆れたように言われて慌てて首を振る。

「ママが、見るかもしれないから」

美雨のスマホはパスワードをかけずにリビングに置いて寝ることになっている。ママがいつ何を見ていても文句は言えない。

伝わるようにちゃんと説明しなくちゃと思ったけれど、羽鳥はそれ以上の説明を求めなかった。

「わかった。連絡したいときは通話でやる。録音したりはしない。そのくらい信じられるだろ」

言うだけ言って、歩いていってしまった。いつまでも2人で話しているのも目立ちそうだから、ありがたいことだった。


< 21 / 141 >

この作品をシェア

pagetop