リト・ノート
「美雨ちゃん、羽鳥と何話してたの?」

ほんの少しの会話だったのに、それでももうクラスメイトの2人に話しかけられて驚く。

「男子と話してるの珍しいよね。なんか言われたの?大丈夫?」

「え、言われてないよ、大丈夫」

おうむ返しにしつつ、何を話していたって言えばいいんだろうと頭を巡らせていたが、2人はどんどん勝手に話しだしていた。

「羽鳥って話しにくくない?」

「あーわかる。なんか怖い。っていうか怒ってそう」

「わかるわかる!沙織ですら近づけないって感じだよね」

話を聞きながら、どうしてみんな羽鳥が苦手なんだろうと美雨はぼんやり思っていた。

羽鳥は、愛想はないがいつも親切だ。昨日も犬の飼い主を探してくれて、道案内もしてくれた。クラスの他の男子よりはよっぽど話しやすい。

でもしゃべるのも書くのもできないって、呆れられたようだった。

羽鳥にはきっとわかっているだろう。美雨が単なるガリ勉で、勉強も人が言うほどできなくて、得意なことが何にもないってことを。

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