リト・ノート
鳥かごをテーブルに置いて美雨が床に座ると、羽鳥は無造作に左手を出した。ためらいが全くないのが微妙だと感じながら、美雨は右手をそっと重ねる。
女子と手をつなぐのに慣れている感じ? 羽鳥は普段不愛想でそんなタイプじゃないと思うんだけど。
小さい妹でもいるのかなと考えて、こういう考えもリトに伝わってしまうことを思い出し慌てて気持ちをリトに向けた。
「やあ、羽鳥」
1週間黙っていたことが嘘みたいに、リトはすらりと話し始める。
「今日は2人で何か用かな?」
「聞きたいことあれば先に聞けよ」
羽鳥が話を進めるのかと思っていたので、一瞬美雨はめんくらった。でも、この1週間気になっていたことならある。
「あなたはリトなんだよね?」
「そうとも言えるね。完全に同じではないが」
「聞きたいことがあるの」
「答えよう」
「リトは私のことが嫌いなの? どうして?1年経っても懐かないし、どうしたらいいのかわからなくて。どういう風にしてほしいのか教えて」
羽鳥は隣で呆れたように「今それ?」と呟いた。美雨が無言で目をやると、文句を言うように続ける。
「せっかくチャネリングしといて、聞くことはインコの飼い方」
なんにも知らないくせに。私だってやれることはいろいろやったんだよ。でも、懐かないんだもん。