リト・ノート
ひとつも言葉にはならず、でも明らかにむっとして黙り込んだ美雨に気づき、羽鳥がフォローする。
「いや、いいけどさ」
「リトは人間を警戒している。あまりいい体験をしてこなかったようだ」
2人のやり取りには興味を示さず、リトは淡々と答えを返す。
「どうしたらいいの?」
「どうしようと君の自由だが。君の心の平安を望むなら、期待をしないのがいいだろう」
期待をしない? 懐かないだろうなって諦めるってこと? 美雨がそのまま言葉に詰まるのをみて、羽鳥が混ぜ返した。
「あのさ、リトはこんな風だって他人事で言うなら、結局あんたはリトじゃないんだろ?」
「リトの意識に同調している。リトと呼んでくれて構わないが」
「宇宙人とかじゃないの。鳥に憑依とか聞いたことないけど」
「だとしたらどうなんだ? 君は頭でいろいろ考えすぎている。私は君が思う通りの存在だ。宇宙人だというならそうだろうし、インコだと思うならそれもまた正しい。もしくは君たちの妄想というのも、それもまた正解だ」
なんだろう、この会話。結局先週の続きのようにリトの正体を羽鳥が聞いている。リトは答えているようで全く答えになっていない。羽鳥もうまく切り返せないようだった。