リト・ノート
チチ、とインコの声で鳴き小首を傾げるリトは、冷静な口調に似あわずかわいらしい。怖さは薄くなってきたものの、どうにも現実感がわかない会話だ。
自分も何か言うべきだろうか、とあいまいに口を開いた美雨より先に、リトが言った。
「羽鳥と美雨には共通点があるようだね」
つい手に力が入ったことに羽鳥が気づかないといいと思いつつ、羽鳥も息を呑んだことに美雨も気づいていた。
確かに私たちは、不名誉な共通点を持っている。2人同時に今、そのことを思ったに違いない。
羽鳥は私立の最難関を受験して落ちたらしいと聞いている。滑り止めまで落ちてしまったのか、自分のように無謀だったのかはよく知らない。
とにかくどこにも受からなかった。そして公立中に通っている。そういう共通点。
羽鳥が何か言う前に、美雨はそっと右手を引っ込めた。今日はもうやめようと言うと、羽鳥も意外とすんなり受け入れた。
手を離せばきっとリトは返事をしないだろうと思いつつ、「今日は疲れたからまたね、リト」と鳥かごをいつもの場所に吊るし直した。