リト・ノート
3.シアワセニナリタイ
「今日は俺が聞くから」
一週間後の水曜日、羽鳥はいろいろ考えてきた様子だ。前日に学校の廊下で「明日平気だよな」「うん」とごく短い会話をしただけだが、羽鳥にとってこの訪問は定期的に行われるともう決まったことらしい。
連絡しないでと自分から言った手前、美雨は何を聞くつもりか事前に聞くこともできずにいた。
隣から当たり前のように差し出された左手に右手を乗せる。「怖がるようなこと聞かないから」とその手をぎゅっと握りながら羽鳥は小さく言う。
そんなつもりは微塵もないんだろうけれど、声変わりで低くなりかけた声で囁くように言うのは反則だ、と美雨は思った。
軽いあいさつの後、すぐに羽鳥が本題に入った。
「俺たちが呼んだんだよな」
「なんのために僕を呼んだか、覚えてないのか?」
「呼んだことすら覚えてないけど。呼べば願いを叶えてくれるんじゃないの? アラジンの魔法の精みたいなもんかと思ったんだけど」
「なるほど、それは面白い考えだ。君がそう望むなら、そうなんだろう」
「真面目に答えろよ」
「いたって真面目だが。君たちの心からの願いを教えてくれたら、僕が叶える」
リトが断言する。早口の応酬をメモしていた美雨に顔を向けて、羽鳥が得意げに口の端をあげた。