リト・ノート
「別に……部活とか、ゲームとか」

「今はやってない?」

「いや。そうでもないけど」

「じゃあ君は、やりたいことをやっている。すばらしい」

「違う。もっとさ、今とかじゃなくて、いつもやりたいようにしたいんだって」

「そうか。なら、考えてごらん。なんだって許されるとしたら、一体なにがしたいんだい?」

フワフワしたかわいい顔を傾け、リトは羽鳥を無表情な赤い目で覗き込む。

許される?と羽鳥も首をかしげた。

「美雨は? なんかある?」

「わ、私? 私もすぐにはわからない」

急に話を振られた美雨は一瞬逃げようとして、でも自分の場合はお金持ちとかじゃないなと思い直す。

「あの、みんなが、家族が幸せだったらいいなと思って」

「家族か。他人のことは難しいね、自分のことを言ってごらん。美雨が幸せになりたい。それでいいかい?」

そう言われるとちょっと恥ずかしいなぁと思ったが、とりあえず頷いてみた。

「いいよ。今すぐ幸せになりなさい。僕が許可しよう」

「……どうやって?」

「大丈夫、君はもう幸せになった」

何を言っているのだろう、意味がわからないと思った。

羽鳥と話そうとして思わず手を離した途端、また眠気に襲われる。

「おい、大丈夫か?寝そう?」

羽鳥の声が聞こえたが答えられず、テーブルにぶつからないように自分を支えるのが精一杯だった。



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