リト・ノート

自分の腕を枕にして横を向いた状態で目が覚めると、じっと覗き込む顔と目が合ってうろたえる。羽鳥もすぐに目を逸らした。

「今何時?」

「すぐだった。10分ぐらいしか経ってない」

最初の日に比べれば確かに短時間だが、見られていたと思うと短くはない時間だ。



「悪い。考えてきたつもりだったんだけど、思ったようにいかなかった。でも願いを叶えてやるって言ったよな、本当だったらすごくないか?」

興奮気味の羽鳥に流されそうだが、美雨はなんとなくまだ怖いと感じている。

「そう言うのって悪魔との契約みたいだよね」

「悪魔?あいつそんな変なのだと思う?」

「ううん、そうでもない。言ってることは変だけど悪い人じゃないと言うか」

高い声と偉そうな喋りがアンバランスでコミカルな感じがするし、嘘や悪意は感じない。

「俺もそう思う。とりあえず願いってのは俺が考える。悪魔との契約、怖いだろ?」

バカにするような言い方に美雨はムッとした。羽鳥はちょっと意地が悪い。

「羽鳥がもし思いつかないなら私でもいい?」

「いいけど、別に。なんかある?」

「あるかもしれないから」

まだ言わないことにした。もしも願いが叶うなら、もちろん叶えて欲しいことがある。テストのことばかり言っていたリトなら、叶えてはくれなくても何かアドバイスをくれるかもしれない。




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