リト・ノート
結構かっこいいと言われた羽鳥のほうは女子には興味がなさそうで、自分に都合よい願いを叶えようと頭をひねっていた。美雨の部屋に入ってもぶつぶつ言っている。
「俺が何かしたいとして、リトが叶えるってなんだよ。オレがやるんじゃないのかな」
「そうだね。今すぐお金持ちになるなら大金拾うとかなのかな」
「それ別に面白くないしな。中園は?かなえてほしいこととかあるわけ?」
中園って呼んでいると気づく。そうだよね、別に仲良くなったわけじゃない。リトと話すときだけ美雨と呼ぶことにしたんだろう。
羽鳥は器用だなあと思いつつ、沙織との違いをここでも思い知らされる気がした。沙織は男女問わず、多くの人に名前で呼ばれている。
「私の願いから言ってもいい?」と手をつなぎながら聞いてみる。
「いいよ」
どうせ「それ?」とか言われるんだろうけど、美雨にとっては大問題だった。
「高校受験に合格させてほしい」
「つまんなくないか? 自力で受かるとこでいいじゃん、そんなの」
予想どおり突っ込んでくる羽鳥は気にせずリトに説明する。
「勉強はちゃんとやるから、入試の日にお腹が痛くなったり緊張したりしないようにして欲しいの」
考えてきたことを真剣に頼んだ。具体的だし、そんなに無理な願いではない気がした。