リト・ノート
「入試は『今』じゃないから難しいね。僕は、時間を扱えないな」

あっさりダメだと聞いて、美雨はそれ以上交渉する気になれなかった。次どうぞ、という気持ちで羽鳥を見遣る。


「学校がつまらない。もっと面白いことがやりたい」

「いいね。今、学校で、面白いことをやる」

「体育祭でなんかやろうかなと思ってさ。今から競技の内容を変えたい。あと、実況やりたい」

「それを叶えよう。でもやるのは君だ。なにしろ僕はカゴの鳥だから」

リトなりに冗談を言ったつもりらしく、チチチと鳴いて胸を張った。「やっぱりなぁ」と羽鳥は呟く。

「羽鳥がやるなら、リトは何をするの?」

「そうだね。僕は幸せになる秘訣を教えてあげる」

それは私の願いじゃなかったかなと思いながら、美雨はペンを握りなおした。

「1.その瞬間に、一番やりたいことをやる」
「2.自分の情熱を、全部かけてやる」
「3.結果へのこだわりを、ゼロにしてやる」

一字一句書けるように配慮してか、リトはことさらにゆっくりと言った。

もう少し大丈夫な気がしたけれど、美雨が眠ってしまうのを恐れた羽鳥がここで切り上げようと言った。

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