リト・ノート


結局沙織に拝まれるようにして、試験一日目が終わってから美雨の家で数学を教えることになった。

「頼んどいて押し掛けてごめんね?うちだとうるさいからさぁ」

「大丈夫。うちのお母さん遅いし、保育園のお迎えしてから帰ってくるから」

こんな風にさりげなく気を遣ってくれたり、勝手に他の子達を誘ったりしないところが沙織のいいところだと美雨は思っている。

美雨が大人数で過ごすのが得意じゃないことを、ちゃんとわかってくれている。



部屋のローテーブルで勉強を教わりつつ、沙織は「やっぱり苦手、ここ」と投げやり気味だった。

つるされた鳥かごを見上げながら、ため息をついている。

「いいなぁ、小鳥。私もペット欲しいんだけど、うちは絶対無理だし」

「アレルギーなんだよね?」

「妹がね。猫アレルギーなら鳥はいいんじゃないのって思うんだけど、動物全部だめって。過保護だからね、あの子には」

沙織が立ち上がって鳥かごを覗き込むと、いつも通りリトは奥へ飛び移っていく。
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