リト・ノート
「省吾はなんでもできるんだよ。俺みたいにすぐサボらないし、受験も余裕だった」

美雨が本音で話したからか、羽鳥も自分のことを言う。サボっているようには見えないが、羽鳥は体育祭の時のようなやる気をいつも出していないようには思われる。

「お兄ちゃんのことは知らないけど……私の好きな本にね、やる気を出さないやればできる男は結局ただのぼんくらなんだっていうセリフがあるの。羽鳥はまだ、ただのぼんくらなんだと思う」

「それ、励ましてるつもり?」

「うん。やる気出した後はね、その人かっこいいんだよ」

笑顔で言うと、羽鳥はちょっと目を逸らし顔をしかめた。うまく伝わらないか、褒めてるつもりなのに、と美雨は自分の口下手をまた残念に思う。

「好きなセリフとかも覚えてんの?よっぽど好きだよな。1人で本読んでるのが美雨のやりたいこと?」

美雨って言った、と少し驚きながら気にしないふりで答える。

「話し相手が欲しいかなぁ。面白いよって本を教え合ったり」

そういえば、とふと思い出したことがある。

「……あのね、ビブリオバトルって知ってる?」

美雨の『やりたいこと』の話が始まった。

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