リト・ノート
教室では、2ヶ月に一度の席替えが行われた。くじ引きだったが、女子たちによるあからさまな不正により美雨は山根の隣になった。
なんとなく嬉しそうなクラスの雰囲気に嫌悪感を感じつつ、ここで何も言い出せないのが美雨だった。山根も困ったように笑っているからなおさらだ。
山根にも何か申し訳ないと美雨は思っていた。山根は羽鳥とは別の形で話しやすい男子だ。力の抜けたちょっとほっとするような話し方をする。
でも噂になるくらいなら、あまり話さないほうがいいのだろうか。隣の席ではそうもいかないのか、と今後を思ってため息が出た。
翌朝の通学路で、沙織が「山根のこと迷惑してる?」と聞いてくる。
「真尋たち盛り上がってて止められなかった、ごめん」
「私、山根くんのこと好きそうに見えるのかなぁ。別に全然なのに。話しやすいから隣なのはいいんだけど」
これは美雨の本音だった。ただ、冷やかされたりするのにどう対応していいのかわからないのが問題だった。返答に困って赤くなろうものなら、周りがさらに盛り上がるのは間違いなさそうだ。