リト・ノート
5.ウンメイノアイテハ

放課後の図書室は、いつもよりさらに人が少ないようだった。受付の3年生に先生がいるか聞いてから静かに図書準備室をノックする。

1人でいた町村先生は羽鳥と美雨に向き合い椅子を勧めてくれた。

「ビブリオバトル? ごめんね、聞いたことある気がするけどわからないわ。どういうの?」

基本的には、何人かで好きな本を5分程度ずつ紹介するイベントだ。観客がその中から読みたくなった本を投票して勝ち負けを決めるバトル形式のためにこの名前がついた。美雨の受け売りだが、羽鳥の説明は簡潔でわかりやすかった。

書店や図書館などで単発イベントとして開かれることもあるし、継続的に取り組むサークルや全国規模の大会もある。美雨がそう付け足した。

「図書委員会でやるには面白そうだけど、羽鳥はどういう関わりなの?」

「中園にたまたま話聞いて面白そうだと思って」

「体育祭で味をしめたか」

クラスメイトと違って、先生達はこういう話をいちいち恋の話に結びつけようとはしない。

「生徒主体で色々できるっていいと私は思うよ、確かに。でもこれは放送委員の仕事じゃないから。中園さん、あなた主体でできる?委員会で提案してみんながやる気になればOKするよ」

「萩原さんと相談して、2人で提案してもいいですか?」

同じく図書委員の沙織の名前を出すと、もちろん協力者はいたほうがいいと言ってくれてホッとする。
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