リト・ノート
「リトちゃん、こっちおいで? こわくないよ?沙織だよ、美雨の友達だよ?」
「私にも全然だからきっと無理だと思う。ごめんね」
「でも賢そうだよね、この子。おしゃべりとかしそうなのにね」
沙織に言われて、昨日の話をしてみようかとちょっと考えてみた。
「オハヨーとかも言わないんだよね? まずは寄ってこないとダメなのかな」
「あ、あのね、昨日ちょっとしゃべった気がしたんだけど」
「ほんと?すごいじゃん!なんて言ったの?」
目を輝かせて沙織が振り向いた。なんてって言われても、と美雨は口ごもる。
「でも早口でよくわからなくって、1回だけだったし、勘違いかもしれなくって」
「そっかぁ。でもこれから少しずつ話すようになるんじゃない? いいなぁおしゃべりインコ!」
美雨にはそんな風に思えなかった。「美雨も100点取れて当然でしょ」そんな風にまたしゃべりだしたら怖い。
それでもどうせなら二人で勉強しているうちに何か言ったらいいと思ったけれど、もちろんいつも通りリトはこちらに無関心なまま沙織との勉強会は終わった。