リト・ノート
話す練習がしたくても家に行くにはさすがに非常識な日にちだよな、と戻って来た自室のベッドに寝転んでスマホを眺めていた。
連絡してもどうせ、まともな返事はないだろう。
そこに【明日初詣行こうぜ】と最近つるんでいるクラスの男子達から誘いが入った。地元の小さい神社でなく、この辺りでは一番大きい神社まで行こうと話がまとまっていく。
今までならクラスイベントは避けがちだったが、ふと行ってみようかなと思った。
【現地集合ならチャリで行く】
【珍しく羽鳥参戦ー!走ってこいよ!】
【健吾はじいちゃんちから自転車なんだろ。飛ばせよー】
くだらない陸上体力ネタは適当に流し、大階段の下を集合場所に決めた。
バスで来た数人も含めだいたい集まったところで、神社の長い石段を登って行く。途中で誰かが「競争だ」と叫び出し、ダッシュで駆け上がった。
もちろん健吾が一番だった。これだけ日々走りこんでるのに負けるわけにはいかない。
2日目だと言うのにまだお参りには列ができていたから、とりあえず後にしようと並んでる屋台を物色し始めた。
串に刺した熱い餅を食べながら1個じゃ足りないなーとしゃべってると、スマホを見て「女子も来てるってー」と声が上がった。
「誰?」
「松尾、小森、三船らへんかな」
クラスのグループ内でやり取りしてるうちになんとなく合流する流れになったらしい。
「羽鳥、沙織来てないの?」
「知らねえよ」
「おまえら結局付き合ってないの?」と余計な詮索をしてくる相手には無言で蹴りを入れて無視した。